日之出郵船(株)では近年、多目的重量物船・在来船を連続して建造し、それぞれが在来定期航路で活躍しています。
船名にしゃれた横文字を使うのが最近の主流のようですが、同社では日本の地名や山・川などの名前を付けるNYKの伝統を受け継ぎ、新造船に日本各地の地名を付け、船型ごとにイニシャルを統一しています。例えば載貨重量2万トン級で、150トンクレーン2基を装備し最大300トンの重量物を積み降ろしできる多目的重量物船は、Iから始まる“Iyo”(伊予)、“Ise”(伊勢)など。3万トン級で200トンまで積み降ろしできる船は“Kuwana”(桑名)、“Kumano”(熊野)などと、船名から船種・特徴が分かります。2010年までの建造決定分も含め、現在の船隊はIクラス10隻、Mクラス10隻、Nクラス5隻、Kクラス3隻、A・W・F・H・S・特Kクラス各2隻となっています。
これらのほとんどはNYKが戦前・戦後に保有していた定期船と同じ名前を使っており、定期航路を支えたスター船隊の備忘録にもなっているのです。ちなみにパナマ船籍の場合、以前に使用した船名と同じ名前は認められません。また、フィリピン船籍では普遍的な英語名しか認められていないため、日本の地名などを付けることはできません。
船は単なる商売道具ではなく、誕生からわが子同様に慈しむものと考えていた人にとっては、船名ごとにいろいろな思い入れがあったのではないでしょうか。今後も同社では、こうした歴代の名前を受け継いだ船が新しい歴史を築き上げていくことでしょう。
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グループ報「YUSEN」
2006年10月号No. 560
【表紙のことば】 鉄は灼熱の火の中で生まれます。
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