かつて船では、30分ごとに時刻を知らせるタイムベル(時鐘)を鳴らしていました。鐘が1つで1点鐘と言い、0時30分は1点鐘、1時は2点鐘と続き4時の8点鐘で一巡です。
それを6回繰り返すと24時間になります。ここで逸話を1つ。夕暮れ時に船を襲うといわれる海坊主をだますため、18時30分から1時間だけ時鐘の鳴らし方が変わります。本来であれば18時30分は5点鐘ですが、実際には1点鐘。19時が2点鐘、19時30分が3点鐘、20時は8点鐘です。このように時鐘を不規則に鳴らすのは、海坊主に夜の近いことを悟られないためといわれています。海坊主は時し化けや嵐を指すと考えられていて、これは嵐に遭わないための「まじない」のように続けられました。
さて、時を告げる鐘の音は船内はもちろん遠く船外にまで響くので、霧で視界が利かないときや火災などの非常時に鳴らす警鐘としても重要な役割を果たしていました。1950年代半ばからは点鐘で時刻を知らせることもなくなり、警鐘が主な用途となりました。現在でも船の法定備品としてその保持は義務付けられていますが、呼び名は時鐘から号鐘へと変化しています。
写真は1908(明治41)年に竣工した「天洋丸」のものです。時を告げ、船の安全を守り続けたタイムベル。今は歴史博物館の展示室で静かに歴史を伝えています。
「天洋丸」は東洋汽船(T.K.K.)が1907(明治40)年に建造した貨客船。26年にNYKが同社旅客船部門を合併し、本船はNYKに継承された
社内報「YUSEN」
2004年6月号
【表紙のことば】 鶏(くだかけ)が朝を告げ、新しい生命(いのち)が誕生する。鶏プロジェクトが生んだ卵は、NYKグループのバルク・エネルギー輸送の新しい世界展開に続々とつながっていく。
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