新造船を初めて水に浮かべる儀式である進水式。現在では、ドックに注水して行われるのが主流となっていますが、以前は、数万トンもの船体を船台から水上へ滑り出させるという大掛かりな方法がほとんどでした。
こうした進水式は勇壮で、まず船底の両側に残されていた支え(磐木=ばんぎ)が外され、次に船体をつないでいる支え綱を斧(おの)で断ち切ります。すると巨大な船体がゆっくりと動きだし、ブラスバンドが演奏する中、船首に飾られたくす玉が割れて紙吹雪が舞い、鳩(はと)が放たれ、新造船は水しぶきをあげて船尾から豪快に進水するというものでした。
進水式の支綱(しこう)切断に欠かせないこの斧は、造船所が船ごとに新しく作り、その記念として船主に贈呈されました。
歴史博物館では、数多く作られた日本郵船の新造船のうち「照国丸」(1930年竣工)や「能登丸 I 」(1934年竣工)など、40船分の斧を収蔵しています。
戦後の新造船「浅間丸 II 」(1954年竣工)の支綱切断斧
社内報「YUSEN」
2004年1月号
【表紙のことば】 一足お先に新春の初夢を 活況を迎えた海運業界。新しい年はNYKグループにどんな夢を運んでくれるのでしょう?
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