戦前の客船のメニューは、さまざまな美しい絵柄で彩られていました。数十種類もの台紙を朝食・昼食・夕食用に準備しておき、献立を船内で印刷していました。テーブルでは毎回デザインの違うメニューを話題に、船客たちが会話を弾ませることもあったようです。
絵柄は日本の四季折々の風物や、浮世絵の美人画、神社仏閣などで、大変色鮮やかなものでした。また、外国人船客のために英語で絵柄の説明を記したものもありました。
今回紹介するのは、竹久夢二の絵を用いたメニューです。梅の花をモチーフにした華やかな着物を身にまとい、憂いを帯びた目元の舞妓(まいこ)。「夢二式美人画」の典型ともいえます。叙情たっぷりのこの絵を採用したメニューは「秩父丸」をはじめとした豪華客船の1等船客用ディナーのテーブルを飾りました。
「秩父丸」ディナーメニュー(竹久夢二画)
上:1930(昭和5)年4月18日
下:1930(昭和5)年11月21日
社内報「YUSEN」
2004年2月号
【表紙】 自ら変わる勇気を持って、わたしたちは次の120年の航海に出航します。
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