戦前の船旅は欧州まで約1カ月、北米まで約2週間という長い道のりでした。快適な生活を送るため、船内ではさまざまな娯楽や遊戯が用意されていました。
『THE TRAVEL BULLETIN』1925年3月号では、NYKの船旅には、快適なデッキチェア、リラックスできる読書室、運動不足を解消するためのデッキゴルフやデッキテニス、また常夏の海を通過する際のウオータースポーツ、さまざまなコスチュームで彩る仮装舞踏会と、乗船客に喜ばれるものが用意されていると紹介しています。
中でも、乗船客を夢中にさせたものの一つは「マージャン」でした。当時は「骨牌(こっぱい)税法※」という税法があり、ギャンブル性の強いカードゲーム類(マージャン牌、トランプ、花札など)の製造・販売が課税対象となっていた時代でしたが、同号では日活女優でもあった酒井米子(1898~1958)が船内でマージャンに興じる様子も掲載されています。
また、乗船客用に発行された英文のルールブックはかなり重宝されたようです。こちらは、大正時代から発行されていました。ちなみに、元船長が所有していた日本語の手書きのルールブックも残されており、当館で収蔵しています。
運と偶然の絶妙なブレンドに一喜一憂するマージャンは、長い船旅に彩りを添えたことでしょう。
※ 骨牌税法:トランプ類税の旧称。マージャン牌やトランプなどに課税された。商品は厳重に梱包され、税務署から交付された証紙(印紙)を貼付しての出荷が義務付けられた
『THE TRAVEL BULLETIN』:1920~41年、日本郵船が発行した英文広報誌。全195巻
当ホームページに掲載されている写真・図版・文章等は許可無く転用・転載はできません。
グループ報「YUSEN」
2016年11月号No. 711