この夏も各地でさまざまな盆踊りが開催されました。盆踊りは、戦前の『THE TRAVEL BULLETIN』でも日本の夏の風物詩として度々取り上げられています。1929年8月号では「お盆の時期に開催される、沿岸集落に住む若い漁師たちや米農家にとっての最大の楽しみ」と紹介されています。
たいていは寺や神社などの広場に集まり、リーダーの合図で櫓やぐらを囲んで円になった人々が回りながら歌い踊りました。笛や太鼓を伴奏に歌われる内容は恋の小唄や村の伝統的なものがほとんどで、例として「思う男に添わさぬ親は親でござらぬ子の敵」という女性の歌が紹介されています。本人の意思に反した結婚が多かった、87年前の様子がうかがえます。年配の人々や幼い子どもは観客として広場を囲みました。写真を見ると中央に櫓が組まれ、日本髪に着物姿で踊る女性たちと鈴なりの観客の様子が見て取れます。
時に夜通し行われた盆踊り、記事は「月明かりが照らす中、代々伝えられた踊りを楽しむ人々の姿は絵のように美しい」という言葉で締めくくられています。その幻想的な光景は、きっと87年経った今年も変わらなかったことでしょう。
『THE TRAVEL BULLETIN』:1920~41年、日本郵船が発行した英文広報誌。全195巻
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グループ報「YUSEN」
2016年9月号No. 709