今も昔も、遠洋航路の乗組員には同じ船内で職務を全うする者としての強い絆が生まれます。『THE TRAVEL BULLETIN』1938年12月号では、欧州航路船「香取丸」乗組員の舞台裏の活動を紹介しています。
「香取丸」では、シニアオフィサーが指導者となり、さまざまな活動が行われました。多くの乗組員がデッキ上でのエクササイズに積極的に参加し、また文学に関心のあるメンバーは文学会を組織し、エッセイや小説の執筆、詩作に励みました。俳句を嗜たしなむ句会は、一航海で2回開催することもあったそうです。
中でも盛んだったのは野球です。野球は戦前、大衆が熱狂したスポーツの一つですが、「香取丸」でも船内で4 チームもつくられるほど盛んで、特にベストメンバーを集めた「香取丸オールスター」は欧州航路船野球チーム内でもトップクラスの実力だったようです。アントワープ(ベルギー)に寄港した際は、現地の「オールアントワープチーム」と対戦し、大差で勝利を収めたと記されています。写真を見ると「KATORI」と書かれたおそろいのユニフォームに身を包み、プロ顔負けのスタイルに写っています。
こうした舞台裏での活動を通じて、乗組員たちは日々絆を深めていったのです。
『THE TRAVEL BULLETIN』:1920~41年、日本郵船が発行した英文広報誌。全195巻
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グループ報「YUSEN」
2016年7月号No. 707