時の羅針盤

The Compass of Time

『THE TRAVEL BULLETIN』扇形のブックレット

グループ報「YUSEN」連載中の日本郵船の歴史コラムです。 日本郵船歴史博物館の収蔵品を紹介しています。

NYKは1896年に欧州・米国・オーストラリアの三大航路を開設以来、世界の各都市に支店・代理店を置き、日本人のみならず外国人にも積極的に誘致しました。『THE TRAVEL BULLETIN』1931年1月号には、『An Achievement‐Nine New Ships onOrient Trade Lanes』(日本郵船歴史博物館 収蔵品)が紹介されています。

これは、サンフランシスコ(米国)支店が制作したカラーブックレットで、扇に鶴と富士山といういかにも日本らしい素材を効果的に使用し、外国人の集客を念頭に置いたことがうかがえます。扇を模した表紙を開くと、半円の中央上部に船が立ち上がる大変凝ったデザインで、昭和初期に建造した優秀船9隻※の船内設備の紹介と各地代理店の案内がカラーで掲載されています。それまでに発行した中で最も魅力的なブックレットの一つと評されたようです。

英文広報誌『THE TRAVEL BULLETIN』には、当時唯一の渡航手段である貨客船の船内生活をはじめ、各国の観光案内、日本文化、時事トピックなどが、写真やイラストとともに紹介され、情報満載の旅行ガイドという側面もありました。当時の様子を伝える役割に加え、NYKが今に通じる事柄をいち早く取り上げていたなど、今昔を対比することができる興味深い資料です。オリジナルは当館だけでなく早稲田大学図書館(東京都)などで所蔵されています。

『YUSEN』2010年1月号より『THE TRAVELBULLETIN』からトピックを紹介してきましたが、次回からは、当館の収蔵品にスポットを当て紹介していきます。

※ 優秀船9隻:サンフランシスコ航路の「淺間丸」「龍田丸」「秩父丸」。シアトル航路の「氷川丸」「日枝丸」「平安丸」。欧州航路 の「照國丸」「靖國丸」。南米航路の「平洋丸」を指す

『THE TRAVEL BULLETIN』:1920~41年、日本郵船が発行した英文広報誌。全195巻

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