『THE TRAVEL BULLETIN』1930年7月号では、江戸時代末期に海外に持ち出され、行方が分からなくなっていた品川寺(ほんせんじ)(東京都)の釣り鐘が約60年ぶりに返還されたことが紹介されています。
ジュネーブ(スイス)のアリアナ美術館で発見された鐘の返還を日本政府が要請したもので、その輸送には日本郵船の「諏訪丸」が当たりました。到着後、日比谷公園で時の逓信大臣、文部大臣らが参列し盛大な式典が執り行われ、翌日、牛車で行進し品川寺に納められました。
この釣り鐘は1657年に家康、秀忠、家光の徳川三代将軍の鎮魂のために大西五郎左衛門によって京都で鋳造された由緒ある物で、直径1.3メートル、高さは3メートルもあります。鐘面には6体の観音像と観音経が刻まれ美術品としての価値も高く、2013年の現在も境内の鐘楼でその姿を見ることができます。
ちなみに、品川寺の鐘を持ち帰った「諏訪丸」は、後の第二次世界大戦において北太平洋ウェーク島沖で座礁し、その時にタイムベル(時鐘)が米国へ持ち去られました。そして約70年の時を経て、このほど当社に返還され歴史博物館に展示されることが決まっています。詳細は次号以降でお知らせしますので、どうぞお楽しみに。
『THE TRAVEL BULLETIN』 1930年7月号 早稲田大学図書館協力
『THE TRAVEL BULLETIN』:1920~41年、日本郵船が発行した英文広報誌。全195巻
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グループ報「YUSEN」
2013年7月号No.671
【表紙のことば】 物語は積み重なって歴史になる