時の羅針盤

The Compass of Time

『THE TRAVEL BULLETIN』米国人の目に映った日本

『THE TRAVEL BULLETIN』1929年11月号では、長期旅行で日本を訪れた米国人が見た、当時の日本の印象が紹介されています。この米国人は1928年3月15日、「これや丸」に乗船しサンフランシスコを出発、3月31日に横浜に降り立ちます。それから6月7日に再び横浜から「これや丸」に乗り帰国するまでの約2カ月間、日本、中国、韓国の各所を巡り、訪れた先の感想をつづっています。旅行の中心は日本で、とりわけ強い印象を受けたようです。

速くて快適な鉄道、多くの新しいビル、送電網、最新型の冷蔵庫、自動車、ミシン、ホテルのエレベーターなど、意外なほど発展を遂げていた日本社会に驚いた様子が生き生きと描写されています。また一方で「こうした一面は他国でも同様に見られることであって、最も意義深いのは日本が世界と接点を持ち、世界が提供するものを欲しているという事実である」とも書かれており、鋭い観察眼で当時の世相を捉えています。

この米国人は最後に、日本の最大の財産はその国民性にある、と結んでいます。「日本人は有能で、あらゆる問題に前向きに取り組み、逆境にあっても朗らか。親切で、誇り高く、自分たちの国やその未来に対して自信に満ちている。これこそが最大の財産である」と出会った人々に賛辞を贈っています。

当時この紀行文を読み、船旅で日本に訪れてみたいと興味を抱いた外国人も少なくなかったのではないでしょうか。

  • 『THE TRAVEL BULLETIN』 1929年11月号 早稲田大学図書館協力

『THE TRAVEL BULLETIN』:1920~41年、日本郵船が発行した英文広報誌。全195巻

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