昔から乗客が長い船旅で退屈しないよう、客船内ではさまざまなプログラムが用意されていました。その中の1つである演芸会は、当初欧州航路の3等船室の乗客に対して司厨員により催されていましたが、第二東洋汽船(株)との合併後はサンフランシスコ航路の各船でも実施され、やがて1、2等船室の乗客のためにも開催されるようになりました。
1928年、「大洋丸」に乗船した歌舞伎役者を前に司厨員たちは『勧進帳(かんじんちょう)』を演じ、絶賛されました。また演芸会を盛り上げるべく、紅白引幕や二引マーク入り袢纏(はんてん)など、プログラムに使用する特製小道具が会社から支給されていました。
1935年『THE TRAVEL BULLETIN※1』1月号では、当時の船内プログラムについて紹介されており、歌舞伎のコスチュームをまとった「淺間丸(I)」の司厨員の写真が掲載されています。NYKの客船の船内サービスは国内外で評判を呼び、世界中の多くの著名人が乗船しました。
船は人々の生活を乗せています。船上生活を楽しんでもらおうとする当時の乗組員のもてなしの心は、現在も引き継がれています。
※1 THE TRAVEL BULLETIN 1920〜41年、日本郵船が発行した英文広報誌。全195巻
『THE TRAVEL BULLETIN』 1935年1月号 早稲田大学図書館協力
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グループ報「YUSEN」
2011年8月号No.648
【表紙のことば】 WLBの夏!