時の羅針盤

The Compass of Time

『THE TRAVEL BULLETIN』モダンな芸者とジャズの大流行

米国で生まれたジャズは、大正の始めごろから、本場の演奏を見聞きしてきた船の楽士経験者の活躍や輸入レコードなどによって、その時々の流行に影響され進化しながら、徐々に日本に浸透していきました。

大正の終わりごろ、バンドの生演奏が流れるダンスホールやカフェなどが相次いでオープンし、お酒やダンス、音楽が安価で楽しめる社交場として人気を博すようになります。昭和に入ってしばらくすると、それらの社交場でジャズに合わせてフォックストロット※1を踊る、というスタイルが大流行します。最新のダンスホールやカフェの登場とジャズの流行は、花柳界(芸者の世界)にも影響を及ぼすほどでした。『THE TRAVEL BULLETIN※2』1930年11月号には、「モダンな芸者とジャズの大流行」というタイトルで、数百人の美しい着物姿の芸者がフォックストロットを練習している様子が紹介されています。おもてなしを向上させるべく流行を取り入れ始めた彼女たち。さすがに芸事のプロで、流行のジャズに合わせたダンスものみ込みが非常に早かったそうです。

※1 フォックストロット 4拍子で演奏されるジャズやポピュラー音楽に合わせて踊る社交ダンスのステップの呼称
※2 THE TRAVEL BULLETIN 1920~41年、日本郵船が発行した英文広報誌。全195巻

  • 『THE TRAVEL BULLETIN』 1930年11月号 早稲田大学図書館協力

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