時の羅針盤

The Compass of Time

『THE TRAVEL BULLETIN』洋上の都会生活

娯楽のための現在のクルーズ客船とは異なり、移動が主な目的だった戦前の客船にも、快適さを追求するさまざまな設備が導入されていました。『THE TRAVEL BULLETIN※1』1932年9月号では、当時の新鋭船の設備が紹介されています。

医務室、エレベーター、教会、銀行、デパート、電話交換室、バー、美容室、無線室、理髪室。写真からも高級感が伝わってきます。無線室で受信したニュースは、毎日英語と日本語の船内新聞に掲載されました。人々はラジオやレコード、時には著名人の乗客による講演に耳を傾けたり、美容室で髪を整えて夜は生演奏の流れるダンスパーティーに参加したり、バーで酒を楽しんだり……。さらに週末には教会の礼拝にも出席するなど、まさに文中の"floating palace"という言葉どおり、洋上とは思えないほど充実した船内生活だったことがうかがえます。

※1 THE TRAVEL BULLETIN 1920~41年、日本郵船が発行した英文広報誌。全195巻

  • 『THE TRAVEL BULLETIN』 1932年9月号 早稲田大学図書館協力

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