写真はアラビアガム(アカシア樹脂)、砂糖、食用練り粉で作られたストックホルム(スウェーデン)のグリプスホルム城です。こうした装飾用の菓子はシュガーレプリカと呼ばれ、航海中に開催されるキャプテンズ・ティー・パーティー、仮装送別ディナー、日本の祝祭日を祝うイベントなどを華やかに演出し、質の高い料理や船内サービスと共に世界の乗客から高く評価されていました。このグリプスホルム城のレプリカは、当時スウェーデンの王子が世界一周視察旅行でサンフランシスコ(米国)から「淺間丸( I )」で来日した際、航海中に迎えた国王の誕生日を祝うディナーのために「淺間丸( I )」の菓子部門が制作したものです。後日記念品として同国へ贈呈されました。
シュガーレプリカについては『THE TRAVEL BULLETIN※1』でしばしば紹介され、清水寺、姫路城、ロンドン橋などの作品も掲載されています。大変美しく精巧な作りは人々の称賛の的となり、時には慈善団体や港湾当局、乗客に寄贈されることがあったようです。
※1 THE TRAVEL BULLETIN 1920~41年、日本郵船が発行した英文広報誌。全195巻
細部まで表現されたグリプスホルム城
掲載された作品
『THE TRAVEL BULLETIN』1933年10月号早稲田大学図書館協力
当ホームページに掲載されている写真・図版・文章等は許可無く転用・転載はできません。
グループ報「YUSEN」
2011年2月号No.642
【表紙のことば】 愛Iと人間力で世界を結ぶ