夏の終わりに虫の音を聞き、ほっとした人も多いのではないでしょうか。虫の音を楽しむという日本的な風習が新鮮だったようで、『THE TRAVEL BULLETIN※1』1930年7月号では、当時、日本の夏の風物詩の1つだった東京の虫売りについて紹介しています。
夏の銀座通り(東京都)の夜店や寺社の縁日には虫売りの屋台が多く出ていたそうです。木と紙で造った白黒の格子柄のきゃしゃな屋台では、人気のあるクツワムシ、スズムシ、マツムシが1匹10~40銭、そしてさまざまな形の虫かごが10銭~数円で売られていました(10銭は現在の約80円)。
涼を感じさせる優しい虫の音に魅了され、人々が思わず引き寄せられていく様子から"These singing insects are considered by the Japanese as very pleasant companions in the hot months."と説明しています。
虫売りが往来していた風景は、今日の銀座通りからは想像できません。
※1 THE TRAVEL BULLETIN 1920~41年、日本郵船が発行した英文広報誌。全195巻
細部まで表現されたグリプスホルム城
『THE TRAVEL BULLETIN』1930年7月号 早稲田大学図書館協力
当ホームページに掲載されている写真・図版・文章等は許可無く転用・転載はできません。
グループ報「YUSEN」
2010年11月号No.639
【表紙のことば】 安全を追い求める航海は終らない