日本が高度経済成長期を迎え、重化学工業が発達した1950年代後半。石油や鉄鉱石など莫大(ばくだい)なエネルギー資源や原材料が必要とされるようになり、そのニーズに応えて各種専用船が登場した。大量の貨物を安全かつ効率的に輸送できる専用船は急速に普及し、輸送コストを大幅に削減させることで日本の高度成長に貢献していったのである。
日本郵船の専用船第1号は、1959年に建造された原油タンカー「丹波丸(II)」。世界の海上荷動きの40%以上が原油だった当時としては大型で、スーパータンカーと呼ばれた。また、同年には巨大貨物を自力で荷役できる40トンのヘビーデリック2基を備えた重量物船「三鷹丸」が、翌年には鉱石専用船「戸畑丸(II)」が竣工した。その後、都市ガスや合成ゴムの原料となるLPG(Liquified Petroleum Gas)需要の急増に応え、62年には世界初の大型LPG専用船「ブリヂストン丸」が、64年には世界初のチップ専用船「呉丸」が登場。このほか、セメント専用船、木材専用船、パルプ専用船、自動車専用船などが次々に建造され、船体も順次大型化が図られた。
こうして創業以来長らく定期船を経営の柱としてきた日本郵船は不定期専用船分野に大きく乗り出し、61年からの14年間で82隻を建造した。
「丹波丸(II)」
「戸畑丸(II)」(左)と「ブリヂストン丸」
グループ報「YUSEN」
2009年7月号No.623
【表紙のことば】 海賊襲撃の危機にひんする商船。対策に終わりはない
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