五大湖※1を、NYKの定期在来船が航行していた時期があります。セントローレンス川をさかのぼり、モントリオール、トロント(以上、カナダ)、クリーブランド、デトロイト、ミルウォーキー、シカゴ(以上、米国)に達するこの航路は、いざなぎ景気(1965〜70年)と同じ65年に始まり74年まで開設されていました。日本からは主に鋼材、米国・カナダからは豆類、新聞用紙、獣皮、粉乳およびアフリカ向けの自動車などを輸送していました。
この航路最大の特徴は、パナマ運河の約4倍もの距離があるセントローレンス水路の通航でしょう。
ここではパナマ運河のような機関車によるけん引はなく、長い水路を自力航行しなければなりません。また、数多くのロック※2があるため通航に30時間もかかり、乗組員にとっては苦労が多かったようです。 もう一つの特徴は冬になると水路が凍結するため、通航期間が4〜12月上旬に限定されていたということです。時には12月の復航時、積み荷を欲張っている間に水路が凍り始めて航路を閉ざされかけたというエピソードも残っています。
こうした厳しい航路事情があったものの、セントローレンス川下流に位置するケベック(カナダ)の街並みやオンタリオ湖近くの水と緑が織りなす島々の美しさは、乗組員の心を大いに和ませてくれました。
※1 五大湖:米国とカナダの国境線をなす5つの湖。東からオンタリオ湖、エリー湖、ヒューロン湖、ミシガン湖、スペリオル湖
※2 ロック:運河などで水門を開閉させて水位を調整し、船を上下させることで高低差のある水路を航行させる設備
五大湖航路に就航していた「秋田丸」
五大湖航路配船当時のセントローレンス水路断面図。 数字は海面との水位差(メートル)(『ゆうせん』1969年10月号より)
グループ報「YUSEN」
2007年12月号No.604
【表紙のことば】 モスクワの聖ワシリー寺院。ロシア語の赤いは美しいを意味するそうだ。500年近い時を経てなお、人々を引きつける
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