陸から遠く離れた洋上では、ニ ュースはいつにも増して人々 の関心の的です。特に戦前、外国に赴 く人々は故郷や渡航先のニュースを渇 望していたことでしょう。当社では、その要望に船内新聞(無線ニュース)で応えていました。戦前に発行された船内新聞は、ガリ版刷りの薄紙1枚だけという簡単なものでしたが、外国人乗客向けに英語版を併記するなど、乗客全員の要望を満たす工夫がされていました。
この製作課程は(1)モールス信号の無線ニュースを受信 (2)それを基に和英の原稿を作成(3)印刷 (4)配布というもの。これが毎日船内で繰り返されていたのです。政治経済など時事ニュースからスポーツの結果に至るまで、単調になりがちな船内生活に新しい情報を運んでくれる船内新聞を、船上の人々はいつも心待ちにしていました。今日では客船、貨物船を問わず船内掲示板に毎日ファクスで届くニュースが張り出されるので、船上にいても日々の出来事を知ることができます。
どこにいても新聞を毎日読みたいという気持ちは、今も昔も変わらないのかもしれません。
1935(昭和10)年12月27日
社内報「YUSEN」
2005年3月号
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