時の羅針盤

The Compass of Time

『THE TRAVEL BULLETIN』大阪城天守閣の再建

『THE TRAVEL BULLETIN』では、乗客向けに日本国内のニュースなども紹介していました。1928年3月号では、大阪城天守閣再建のニュースについて取り上げ、大阪城がかつて「錦城」や「金城」と呼ばれていたことや、幾重もの塀や堀に囲まれていたこと、また豊臣秀吉(1537~98)が配下の武将に巨石を献上することを競わせ、資材を集めたエピソードなどを紹介しています。

この記事が書かれた当時、天守閣は存在せず、敷地内には旧日本陸軍第4師団司令部をはじめ、造兵廠(しょう)など軍関係の建物が立ち並んでいました。大阪市は昭和天皇即位記念事業の一環として、28年に大阪城の天守閣を再建し、本丸をかつての封建時代の華麗で威厳ある姿に戻すことを計画しました。このとき設計されたのは、高さ50メートルを超える鉄骨鉄筋コンクリートの5層の天守閣で、できるだけ1583年築城当時の外観を模し、内部に展望台や博物館といった施設を設けるスタイルのいわゆる「復興天守」の先駆けでした。

再建から3年後の31年に大阪市民の寄付金によって、本丸を含む一帯が大阪城公園として整備され、同時期に復興天守第1号として大阪城天守閣が竣工しました。

2011年に再建80周年を迎え、築城以来最も長命な天守閣として今も市民に愛されています。

  • 『THE TRAVEL BULLETIN』 1928年3月号 早稲田大学図書館協力

『THE TRAVEL BULLETIN』:1920~41年、日本郵船が発行した英文広報誌。全195巻

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