今も昔も貨物の輸送には安全、確実、迅速が求められます。『THE TRAVEL BULLETIN※1』1933年6月号では、日本郵船がこの要求を果たすべく、海陸一貫輸送に取り組んでいる様子が記載されています。
「シルクは常に乗客より速く旅をする」と題した内容は、当時の米国向け主要貨物であったシルクの輸送に関するものでした。高価な貨物のため輸送中に保険が掛けられたことはもちろん、岸壁では警備員を配置、船内では船倉を施錠、列車では機関士や車掌の銃による武装など厳重な盗難対策が取られていました。また航海中は専用のシルクルームで換気や貨物状態を確認するなど、品質管理の点でも細心の注意を払いながら輸送。バンクーバー(カナダ)に船が着くと最初に陸揚げされ、倉庫に乗り入れる専用列車で一路ニューヨーク(米国)を目指していました。
当時、シアトル(米国)航路のバンクーバー経由で鉄道に接続するルートは、横浜~サンフランシスコ(米国)経由より1日早くニューヨークに到着できるというメリットがありました。まさに記事のタイトルどおり、シルクは乗客よりも一足早く旅を進めていたのです。
※1 THE TRAVEL BULLETIN 1920~41年、日本郵船が発行した英文広報誌。全195巻
『THE TRAVEL BULLETIN』1933年6 月号 海陸一貫輸送に取り組んでいる様子を記載
『THE TRAVEL BULLETIN』1933年6 月号 早稲田大学図書館協力
当ホームページに掲載されている写真・図版・文章等は許可無く転用・転載はできません。
グループ報「YUSEN」
2010年9月号No.637
【表紙のことば】 燃節活動も環境保護も、1歩ずつの歩みが大切です